電子ビーム積層造形(EBM)では金属粉末を電子ビームにより瞬時に溶融凝固させるため、析出物の微細分散や非平衡組織の形成が可能です。また、積層方向に対して結晶方位が揃った一方向凝固や造形条件を最適化することで単結晶を作製することも可能です。
ここでは、種々の造形角度で作製した生体用Co−Cr−Mo合金を例に挙げ、EBMにおける析出物の形成と特異な結晶成長挙動についてご紹介します。
急冷凝固プロセスであるEBMでは従来の鋳造法と比較して析出物を均一かつ微細に分散させることができるため、優れた機械的特性が得られます。
また、析出物は積層方向や電子ビームのスキャン方向に強く依存して形成します。
EBMでは積層方向(ビーム方向)と平行に結晶方位が強く配向した特異な凝固組織が形成されます。このようなEBMにおける特異な組織形成はCo−Cr合金以外の合金でも生じることが明らかになっており、ジェットエンジンタービンブレード等の様々な金属製品の開発においても活用することができます。
また、造形条件(電子ビームスキャン法、粉末粒径、予備加熱など)の最適化により単結晶が得られる可能性もあります。
- EBMで造形したCo−Cr合金の力学特性は降伏強度、最大引張強度、破断伸び、ヤング率のいずれも造形角度に依存した強い異方性を示します。
- このような力学特性の異方性は凝固時に形成する強い結晶配向に起因しており、EBMを用いることで材料特性の異方性を生かした材料設計が可能となります。
- いずれの造形角度においても人工股関節用鋳造合金の規格(ASTM F75)を上回る特性が得られています。さらに、独自に開発した熱処理技術を用いることで異方性の低減や引張特性の更なる改善が可能です。